井出草平の研究ノート

女性とゲーム

TEACHFR LIBRARIANという雑誌に掲載されているので、図書館司書を想定読者として書かれてある。

eric.ed.gov Agosto, Denise E., 2004, Girls and Gaming: A Summary of the Research with Implications for Practice, Teacher Librarian. 31(3)

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ゲームと女性

ゲームのキャラクターのわずか16%が女性であった(Douglas et al., 2002)。また、女性キャラクターの約半数は、積極的な参加者ではなく、傍観者であることが多かった。

Deitz(1998) は、ほとんどの女性キャラクターは、不自然に胸が大きく、痩せて、そして、スカンジナビアなドレスを着ていることを指摘している。Provenza(1991) は、女性キャラクターの最も一般的な役割は「悩める乙女」の役割であることを示している。

Deitz(1998)は、女性キャラクターのネガティブな表現は、ゲームユーザーに、女性は弱くて被害者になりやすい人間だというステレオタイプを内在化させ、暴力や被害者化を人生の中で許容できるものだと思わせてしまう可能性があることを示唆している。

ゲームにもフェミニズムの視点が必要という指摘は、日本ではあまり見かけない気がする。地下鉄の通路に書かれた二次元キャラクターなどよりも影響があるとしたら、子ども時代にみるアニメであったりゲームの方ではないかと思う。

プログラムとゲーム

コンピュータゲームは、多くの少年がコンピュータ、特にプログラミングに詳しくなるための重要なきっかけを提供してきたと言われている(Culley, 1993, p. 148)。コンピュータゲームをしていたという経験は、大学レベルのコンピュータ科学コースを修了する一つの予測因子であると指摘されている(Wilson, 2002)。また、カナダ情報処理協会の調査によると、コンピュータサイエンス専攻の学生の中で女性の占める割合は25%未満であることがわかっている。

ゲームをしないことが職業選択の自由を狭めているということだろう。収入面での不利益があるのかが、気になるところだ。
追記:Wilson(2002)を読んだところ、ゲーム経験はコンピュータサイエンス入門の中間試験には負の影響があると書かれていた。ゲームをしていた方がプログラミング等に役に立つというのはWilson(2002)では否定されている。直感的な結論と異なるのは、コンピュータサイエンスの授業の履修をしている人が対象にしており、その時点でサンプルセレクションが働いているものと考えられる。おそらくWilson(2002)の結果を一般人口に適用するべきではないだろう。

女の子は勝敗よりコミュニケーション

Kafai(1996, 1998) は小学校の生徒に自分のゲームをデザインしてもらったところ、男子のゲームでは、善と悪の戦いがテーマとなっているものが多く、女子はストーリー性とキャラクター開発を好む傾向があったという。

他の研究者によると、女の子は競争よりもストーリー性のあるゲームに興味を持っていることが示されている(Lawry et al., 1994; Inkpen et al., 1994)。同様に、Inkpen et al. (1994) の女の子たちは、ゲームに勝つことよりも、ゲームキャラの人格や人生を探求することに興味を持っていたが、これは Miller, Chaika, and Groppe ( 1996) も同様の結果を示している。

玩具メーカーマテルの研究では、女の子は一人でプレイするよりも、他の女の子と一緒にコンピュータゲームをプレイすることに興味を持っていることとしている。ほとんどの女の子が、ゲームにおいても他の人とのコミュニケーションを可能にするものを好むことを示している(Heyman & berstein, 1996; Miller, Chaika & Groppe, 1996)

女の子にもゲームを消費してもらおうとすると、ゲームの作り方も工夫していかないといけないようだ。昔から女性向けのゲームコンテンツは、作ろうという努力はあった気がするが、最近はどうなのだろうか。