井出草平の研究ノート

馬場謙一「EAT−26有効性」

馬場謙一,1994,
「EAT−26有効性」
『厚生省特定疾患神経性食欲不振症調査研究班 平成4年度研究報告書』


拒食症のチェックに使われるEAT-26の研究。


EAT-26とはこういうもの

摂食障害スクリーニングテスト(EAT-26)
http://mental.heart-warm.net/check/ed/eat26.html


この論文で使われたEAT-26の翻訳はリンク先と同じ。同じ出所をもったものなのだろう。ちなみに、この研究もリンク先も、上位3項目(しばしば・非常にしばしば・常に)に1・2・3点を割り振る形式。従って、すべての項目の回答がが「全くない」「まれに」「時々」の下位3項目だと得点は「0点」になる。


調査の概要

 臨床群として、首都圏の病院の外来患者で、摂食障害と診断された者39名と、対照群として、大学生女子390名(国立共学大146人、私立女子大244人)に対し、EAT-26を実施した。
 EAT-26は、食事や体重に対する態度や過活動性など、神経性食思不振症(以下ANと略す)の臨床症状に関する26項目の質問に、「いつも」から「一度もない」の6段階で回答を求めるものである。Garnerらは、異常度の高い上位3段階のみを3点法で採点し、26項目の合計評点が20点以上であれば、ANが強く疑われ、スクリーニングに使えるとしている。


ただ、女子大学生の場合は、通常の3点法だと得点が出ないため、6点法で計算しているようである。

一般の大学生のため、ここでは6点法で採点した。


摂食障害診断者との比較の表があるが、摂食障害診断者の方も6点法で再採点したという記述がない([方法]のところに3点法での採点であるという記述がある)。採点法の違うサンプルを比較している可能性がある。


結論は以下のようなものが出ている。

「痩せ願望」「体型への不満」を強く持つものの、あまりそれを絶食、多食、嘔吐などの行動面で実行しないのが、一般の健康的な大学生の特徴のようである。


読んでて次の記述が気になった。

次に、EAT-26についてバリマックス法によって因子分析を行った結果を表2に示す。


リマックスは回転であって、因子分析の方法ではない。また、因子抽出の方法の記載がどこにもない。因子抽出方法の情報は書いておいて欲しい。


また、この論文で因子分析を行った理由があまりよくわからない。「対照群である女子大生の因子構造は、全く異なるものとなった」という記述はあるが、その因子構造が示されていないので読む方はどう違ったのかということを知ることが出来ない。どういう結果が出てきたのかは分からないが、因子構造の比較をして興味深い事実を発見できたならば、因子分析をする必然性が出てくるので、因子構造の比較が是非とも欲しいところ。


しかし、そのような記述はないので、結局のところ、3つの因子から構成されるEAT-26という指標を実際に使ってみると、やっぱり3つの因子に分解できましたということを示しているだけに終わっている。Garnerらの結果と類似する結果が日本でも出るということを末松らが先行研究で示しているが、これを再び追試したという意義はあるかもしれない。「再現性」というものだ。


ただ、再現することはわかっている話なので、Garnerらの結果との相違点について分析が欲しかった。相違点は具体的いうと、「過食・食物への没入」の因子寄与率が日本での実験では高いという結果(Garnerらの実験での因子寄与率は書いていないが日本よりかなり低いと推測される)などである。