井出草平の研究ノート

HTMT(Heterotrait-Monotrait Ratio of Correlations)

弁別的妥当性の指標であるHTMT(heterotrait-monotrait ratio of correlations)について。HTMTの提唱をした論文はこちら。

link.springer.com

  • Jörg Henseler, Christian M. Ringle & Marko Sarstedt, 2015, A new criterion for assessing discriminant validity in variance-based structural equation modeling, Journal of the Academy of Marketing Science. 43:115–35.

HTMT Online Calculator

www.henseler.com

Henselerによる紹介文。

相関関係のheterotrait-monotrait ratio of correlations(HTMT)による潜在変数の判別妥当性の評価
行動科学者は、潜在変数の弁別的妥当性に関心を持っている。判別的妥当性とは、異なる理論的概念を表す2つの潜在変数が統計的に異なることを意味します。弁別的妥当性を評価するために頻繁に適用されるアプローチは、Fornell-Larcker基準(Fornell & Larcker, 1981)である。しかし、伝統的な部分最小二乗パスモデリングや一般化された構造化成分分析のような分散ベースの構造方程式モデリングの結果と組み合わせて使用すると、Fornell-Larcker基準は感度を欠き(Rönkkö & Evermann, 2013)、一貫した推定値と組み合わせて使用すると特異性を欠く(Voorhees, Brady, Calantone & Ramirez, 2016)。
判別的妥当性を評価するための新しいアプローチがHenseler, Ringle and Sarstedt (2015)によって導入された。HTMTは潜在変数間の類似性の尺度である。HTMTが明らかに1よりも小さい場合、弁別的妥当性が確立されているとみなすことができる。多くの実用的な状況では、0.85のしきい値は、弁別的妥当性がある潜在変数のペアとそうでない潜在変数のペアを確実に区別する。モンテカルロシミュレーションは、HTMTの良好な分類性能の証拠を提供する(Franke & Sarstedt, 2019; Voorhees, Brady, Calantone & Ramirez, 2016)。また、HTMT は比較的簡単に計算でき、観測された変数の相関関係を入力として必要とするだけである。探索的な要因分析や確認的な要因分析は必要ない。HTMT を紹介した論文が、最近の最もインパクトのあるマーケティング論文の一つとなっていることは確かに驚きではない(Shugan's Top 20 Marketing Meta-Journal を参照)。

journals.sagepub.com

link.springer.com

マーケティングの分野で使われている技法らしい。

森岡耕作「顧客資源の構造とブランド価値の創造」

ci.nii.ac.jp

伝統的には,Fornell-Larcker 基準(Fornell and Larcker, 1981)が弁別妥当性の検討に用いらてきているが,共分散ベースの構造方程式モデリングや確認的因子分析において,特に概念に対応する項目数が少ない場合には,因子負荷量がより高く推定されうることが知られているために(Henseler, et al., 2015, p. 117),その因子負荷量に基づいて算出される AVE の平方根と概念間の相関係数とを比較する Fornell-Larcker 基準を用いて弁別妥当性を検討すると,必ずしも適切に弁別妥当性を検討できない可能性がある。そこで,概念ξi(項目数 Ki 個)と概念ξj(項目数 Kj 個)との間における HTMT 比(式)を利用して,弁別妥当性を検討する。そして,すべての概念間の HTMT 比は図表 6 にまとめられる通りであった(なお,比較のために Fornell-Larcker 基準も図表 7 で併せて報告する)。

f:id:iDES:20201106131410p:plain

HTMT 比について,本調査のサンプル・サイズが必ずしも少なくはないことと(N=436),因子負荷量が同質的ではないこととを併せて考慮して,HTMT0.900 基準(HTMTij<0.900)を用いると,顧客資源については首尾よく弁別されているものの,認知的ブランド価値と感情的ブランド価値の 2 つの概念について,それらが必ずしも弁別されないことを示している。