井出草平の研究ノート

石原英樹「日本における同性愛に対する寛容性の拡大 : 「世界価値観調査」から探るメカニズム」

ci.nii.ac.jp

  • 石原英樹. 2012. 「日本における同性愛に対する寛容性の拡大 : 『世界価値観調査』から探るメカニズム」. 相関社会科学, no. 22: 23–41.

いろいろと勉強になることがある。特に、学歴と寛容性の考察が興味深かった。

イングルハートは、大学教育が多様性を認めるリベラルな考えを促すことを指摘している(Inglehart [1977=1978])。

  • Inglehart, Ronald (1977) The Silent Revolution: Changing Values and Political Styles among Western Publics, Princeton: Princeton University Press. = (1978) 三宅一郎他(訳)『静かなる革命:政治意識と行動様式の変化』東洋経済新報社

意識項目を調整項にすると、男性の学歴効果はU字パターンとなるようだ。

価値観を統制すると、男性の学歴効果はU字パターンを示す。中卒者にはもともとジェンダー非対称な意識をもつ人や脱標準的家族を容認しない人、外国人の受け入れに否定的な人が多いが、こうした意識を統制すると、高卒者に比べ中卒者のほうが寛容性が高い傾向があることを意味する。一方、管理職や専門職の男性には一定のジェンダー対称的な意識を持つ人や脱標準的家族を容認する人がいるが、これらの意識を統制すると、ノンマニュアル経験者に比べ寛容性が低い可能性があることを示唆する。

意識項目を調整した後に残る学歴の効果、特に中卒が10%有意で寛容性が高いのはなぜか、という疑問は確かに気にはなるし、この論文のテーマである同性愛への寛容性以外にも生じるものか、という点も気になる。