井出草平の研究ノート

ゲーム時間は抑うつ、学業成績低下、問題飲酒、素行問題といった否定的な結果とは関連していない

pmc.ncbi.nlm.nih.gov

文献整理をしていたら、長く長くなったので、小分けにポストすることにした。
このブログでも何度か言及しているBrunborg et al.(2014)について。この論文は10年ほど前の論文で、DSM-5の参考基準インターネット・ゲーム障害の基準が決まったころである。

  • Brunborg, G. S., Mentzoni, R. A., & Frøyland, L. R. (2014). Is video gaming, or video game addiction, associated with depression, academic achievement, heavy episodic drinking, or conduct problems?. Journal of Behavioral Addictions, 3(1), 27–32. 10.1556/jba.3.2014.002

背景と目的:

ビデオゲームの利用と負の結果との関連性は議論の的となっているが、ビデオゲーム依存症と負の結果との関連性は比較的よく確立されている。しかし、これまでの研究には方法論的な弱点があり、偏った結果を引き起こした可能性がある。省略変数バイアスを回避する手法を活用するさらなる調査が必要だ。

方法:

ノルウェーの13~17歳の青少年1,928人を対象とした2回の調査から、2波のパネルデータを使用した。調査には、ビデオゲームの使用、ビデオゲーム依存症、うつ病、過度の飲酒、学業成績、行動問題に関する測定項目が含まれていた。データは、時間不変の個人要因の影響を受けない回帰分析手法である第一差分法を用いて分析した。結果: ビデオゲーム依存症はうつ病、学業成績の低下、行動問題と関連していたが、ビデオゲームに費やす時間は、いずれの負の結果とも関連していなかった。

議論:

結果は、ビデオゲームに費やす時間と負の結果との関連性を確認できなかった研究の増加と一致していた。本研究は、ビデオゲーム依存症が他の負の結果と関連している点で過去の研究と一致しているが、その関係が時間不変の個人効果の影響を受けない点を追加した点で貢献している。ただし、今後の研究では、仮定される因果関係の時間的順序を確立することを目指すべきだ。

結論:

ビデオゲームに時間を費やすこと自体は負の結果を伴わないが、ビデオゲームに関連する問題を抱える青少年は、人生の他の側面でも問題を抱える可能性が高い。

本研究は、ノルウェーの青年1,928人(調査開始時13~17歳)を対象とした、2時点(2年間隔)のパネルデータを用いた縦断研究である。「Young in Norway」という調査データが用いられている。

研究の主な発見として、ビデオゲームに費やした時間は、調査された抑うつ、学業成績低下、問題飲酒、素行問題といった否定的な結果とは関連していなかったと結論付けられている。一方で、「ビデオゲーム嗜癖」(video game addiction)とされた状態は、抑うつ、学業成績低下、素行問題と関連が見られた。依存状態の判断には、臨床診断ではなく「ビデオゲーム嗜癖」という用語と、DSMの依存基準に基づいた尺度「Game Addiction Scale for Adolescents (GASA)」の7項目版が用いられた。

分析手法には「階差分析(First-differencing)」という回帰分析が採用された。これは、各個人の2時点間の変化量を分析することで、時間を通じて変化しない個人的な特性(安定した性格や知能、社会経済的背景など)の影響を統計的に除去するものである。この手法により、抑うつは主要な結果変数として分析されたが、ADHDが他の精神疾患が時間を通じて安定した特性であれば、直接測定・コントロールせずともその影響は除去されていると考えられる。自閉症に関する言及はなかった。