井出草平の研究ノート

韓国・ひきこもり支援の法律「家族介護等危機児童・青年支援に関する法律」について

2025年2月27日に国会本会議で可決された「가족돌봄 등 위기아동·청년 지원에 관한 법률 (家族介護等危機児童・青年支援に関する法律、以下「危機青少年支援法」)」について。

この法律は、その名称が示す通り、疾病や障害を持つ家族の介護を担う「家族介護児童・青年」に加え、「孤立・隠遁児童・青年」など、様々な危機的状況に置かれた児童及び青少年(9歳以上24歳以下を基本とし、一部状況に応じて延長可能への包括的な支援を規定するものである。この法律の制定は、これまで法的な定義や公的支援の対象として曖昧な位置づけにあった「孤立・隠遁状態にある児童・青少年」を、明確に国の支援対象として位置づけた点で画期的と言える 。同法は、公布後約1年間の準備期間を経て施行される予定であり、この間に施行令や施行規則といった下位法令の整備が進められることになる。

ひきこもりは 家族介護児童・青年 가족돌봄 아동ㆍ청년으로 と呼ばれているようだ。 定義は、孤立・隠遁児童・青年 고립ㆍ은둔 아동ㆍ청년으로 のようだ。隠遁児童・青年というのは日本でいうと、不登校・ひきこもりに相当するのだろう。

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家族介護など危機に直面する児童・若者の支援に関する法律 [施行 2026年3月26日] [法律第20846号、2025年3月25日、制定] 【制定・改正の理由】 制定・改正文の閲覧 全文の制定・改正文の閲覧

[制定] ◇ 制定の理由 危機状況にある児童・若者に対する支援事項を規定することにより、児童・若者の社会的孤立防止及び生活の質の向上を図り、社会構成員として人間らしい生活の営みと健康な社会参加を保障し、社会全体の活力を向上させることを目的とする。

◇ 主な内容 ア. 34歳以下の者で、介護が必要な家族に対して看護・介護・日常生活の管理またはその他の支援を提供している者を「家族介護児童・若者」と定義し、 34歳以下の者で、他者との交流がほとんどないか、相当期間以上居住空間が制限され日常生活が著しく困難な者等を「孤立・隠遁児童・若者」と定義し、家族介護児童・若者の年齢については、兵役義務を履行中または履行済みの場合、その兵役履行期間を加算する(第2条)。

ナ. 保健福祉部長官は、児童政策調整委員会及び青年政策調整委員会の審議を経て、5年ごとに危機児童・青年支援のための基本計画を策定し、3年ごとに危機児童・青年の実態調査を実施し、その結果を公表することとする(第6条及び第8条)。

ダ. 危機児童・若者の専門支援業務を行うため、国または地方公共団体から指定・委託を受けた機関・団体または法人の長は、危機児童・若者実態調査で支援が必要な児童・若者として発見された者またはケース管理を申請した支援が必要な児童・若者などを対象にカウンセリングを実施し、家族支援対象者および孤立・引きこもり支援対象者を選定し、 支援対象者ごとにケース管理計画を策定し、その計画に従い必要な社会保障給付が提供されるよう、ケース管理終了時まで継続的に管理する(第10条から第14条まで)。

ラ. 心理相談支援、健康管理支援、学業及び就職支援、住宅支援、家族支援対象の児童・若者に対する特別支援、孤立・引きこもり児童・若者向けのオーダーメイドプログラムの提供・運営などに必要な事項を定める(第15条から第21条まで)。

マ. 保健福祉大臣が危機児童・若者政策センターを指定できる根拠を定める(第25条)。

ハ. 保健福祉部長官が危機児童・青年のためのプログラム等を模範的に運営している法人・機関・団体を危機児童・青年支援専門機関として認証することができる根拠を定める(第26条)。 <法制処提供>