井出草平の研究ノート

媒介分析[Mplus]

職場における性差別の実験的研究 職場における性差別の実験的研究の分析。

こちらのTable 2.1の例を解説する。コードはリンク先のinpファイルを参照のこと。

www.statmodel.com

データ

onlinelibrary.wiley.com

  • Garcia, D. M., Schmitt, M. T., Branscombe, N. R., & Ellemers, N. (2010). Women's reactions to ingroup members who protest discriminatory treatment: The importance of beliefs about inequality and response appropriateness. European Journal of Social Psychology, 40(5), 733–745.

129人の女性を対象とした実験研究。被験者は、上級パートナーによる差別的行為のために女性弁護士(キャサリン)が資格の低い男性への昇進をどのように失ったかについてのストーリーを提示された。次に、被験者を2つの異なるシナリオに無作為に割り付け、女性弁護士が差別に対して何の措置も取らないことにして会社で働き続けるか(protest=O)、または、なぜその決定が不公正であるかを説明し、決定を再考するように求めるように上級パートナーに働きかけるか(protest=1)を決めた。このデータでは集団抗議(protest=2)が省略されているようだ。

この状況でのキャサリンの反応がどの程度適切であると認識しているかを測定する一連の質問に回答した(respappr)。こスコアが高ければ高いほど、回答の適切性が高いことを意味している。

参加者はキャサリンを評価する6つの質問(例:「キャサリンは多くのポジティブな特徴を持っている」、「キャサリンは私が友達になりたいと思うタイプの人だ」)に答え、 彼らの回答を集約して好感度の指標とした(liking)

パス図

f:id:iDES:20200910120659p:plain

従属変数likingは、独立変数protestを制御する媒介変数respapprによって影響を受けるというモデルである。
直接効果の係数はマイナスであるため、媒介変数による効果が認められる。

コード

媒介変数について定義するのは下記の場所である。

model:
    liking on respappr protest;
    respappr on protest;

Model indirect:
    liking ind protest;

結果

結果変数好感度に対する抗議の直接効果は-0.101と推定され、有意ではない。統計学的な観点から、有意でない負の効果は、母集団値がゼロである場合のサンプリング変動に起因するか、または、有意でない結果がサンプルが小さすぎることに起因する負の母集団値に起因するかのどちらかであると考えられます。取るに足らない係数をゼロに固定して、モデルを再分析することは推奨されない。より良いアプローチは、モデルをそのままにして、単にnonsignifi.canceを報告することです。今後の研究は、直接効果が本当に陰性であることの妥当性を支持するか、論争するかのどちらかを貸すことができる。

MODEL RESULTS

                                                    Two-Tailed
                    Estimate       S.E.  Est./S.E.    P-Value

 LIKING   ON
    RESPAPPR           0.402      0.077      5.247      0.000
    PROTEST           -0.101      0.200     -0.503      0.615

 RESPAPPR ON
    PROTEST            1.440      0.249      5.778      0.000

 Intercepts
    LIKING             3.747      0.407      9.210      0.000
    RESPAPPR           3.884      0.225     17.285      0.000

 Residual Variances
    LIKING             0.824      0.151      5.473      0.000
    RESPAPPR           1.354      0.160      8.460      0.000

従属変数のlikingに対するprotestの直接効果は-0.101であり、有意ではない。respappr→likingのパスの係数0.402とprotest→likingのパスの係数1.440の積0.579となる。直接効果と間接効果の和が総合効果であるため、0.479となる。直接効果が負であるため、間接効果が総合効果より大きい。

信頼区間

n = 129という小さな標本サイズでは、間接効果の分布は正規に近くないかもしれないため、ブートストラップを使って信頼区間の計算を探索をする。推定方法はMLRではなく、MLを使う。MLM, MLMV, MLF, MLRはブートストラップの推定ができないためである。

ANALYSIS: 
   ESTIMATOR= ML;
   BOOTSTRAP = 10000;
   
OUTPUT:
   CINTERVAL(BOOTSTRAP)

結果。

ブートストラップをしない結果。

STDY Standardization

                  Lower .5%  Lower 2.5%    Lower 5%    Estimate    Upper 5%  Upper 2.5%   Upper .5%

Effects from PROTEST to LIKING

  Total             -0.025       0.090       0.149       0.458       0.766       0.825       0.941
  Total indirect     0.237       0.313       0.352       0.554       0.756       0.795       0.871

ブートストラップをした結果。

STDY Standardization

                  Lower .5%  Lower 2.5%    Lower 5%    Estimate    Upper 5%  Upper 2.5%   Upper .5%

Effects from PROTEST to LIKING

  Total             -0.055       0.053       0.126       0.458       0.759       0.813       0.927
  Total indirect     0.263       0.326       0.359       0.554       0.782       0.832       0.942

0.554のSTDY標準化間接効果の対称95%信頼区間は[0.313, 0.795]で、ブートストラップの信頼区間は[0.326, 0.832]で、ブートストラップをした方が区間が広くなる。また、両方の区間の下限がゼロから離れているため、実用的な観点からはその差には注意すべきであろう。おそらく交絡因子があるため、交絡因子の探索が必要とされる。

参考

Andrew Hayesの本6.2にもこの論文の分析が掲載されている。

bookdown.org

こちらはRでの分析。PROCESSを用いてSASSPSSでの解析の可能なようだ。