井出草平の研究ノート

行動制限と広汎性発達障害


今回は医療観察法と広汎性発達障害の論文。とりあげるのは、指定医療機関での行動制限についてである。

平林直次ほか,2011「入院医療における治療プログラムの多様化に関する研究」
平成22年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(精神障害分野)分担研究報告書: 19-56.


行動制限とは、院内での暴力性、自傷などの理由で、拘束もしくは隔離をすることを言う。


診断別の行動制限は以下のようになっている。

広汎性発達障害を表すのはF8のコードである。平成19年から平成22名までで13名のものが行動制限を受けている。行動制限対象者にしめる割合は5%である。
ちなみにここで件数と呼ばれているものは「同一施設で同一症例に対して拘束13回、隔離9回を繰り返した症例は、拘束、隔離各1件として集計した。」とされているので、実人数に比較的近い。

本論文中には入院者総計は掲載されていないので、他の資料から補足しよう。厚生労働省心神喪失者等医療観察法による入院対象者の状況医療観察法の対象になったのは642人であり、そのうち広汎性発達障害にあたるF8は12人であり、1.87%である。


指定医療機関で行動制限を受ける広汎性発達障害の者は比較的多い傾向にあると言えるだろう。


また、特に長期の行動制限は多いようだ。

行動制限の実施期聞が365日を超える長期隔離症例は、すべて男性であり30〜50代であった。診断別に見ると統合失調症が3例と最も多いが、広汎性発達障害2例、器質性パーソナリティ障害1例が含まれていた。(26)


実施数の総計は259件であるので、1年を越える長期行動制限は非常に多いと考えられる。
実際にどのような行為をして行動制限が行われたかは論文では、明らかにされていない。