井出草平の研究ノート

子どもの余暇時間における画面ベースのメディア利用とその近接要因を評価するための質問票の開発(SCREENS-Q)

子どもの余暇時間における画面ベースのメディア利用とその近接要因を評価するための質問票の開発(SCREENS-Q)

bmcpublichealth.biomedcentral.com

  • Klakk, H., Wester, C. T., Olesen, L. G., Rasmussen, M. G., Kristensen, P. L., Pedersen, J., & Grøntved, A. (2020). The development of a questionnaire to assess leisure time screen-based media use and its proximal correlates in children (SCREENS-Q). BMC Public Health, 20(1), 664. https://doi.org/10.1186/s12889-020-08810-6

SCREENS-Qは、現代の複雑なメディア環境における子どものスクリーン利用実態を多角的に捉えるために開発された質問票である。
日本語化はされていない。

目的と対象

SCREENS-Q(The questionnaire to assess leisure time screen-based media use and its proximal correlates in children)は、6歳から10歳の子どもを対象とし、その余暇時間におけるスクリーンメディアの利用状況、習慣、家庭環境、およびそれらに関連する近接要因を包括的に評価することを目的とする。回答は保護者が行う形式(親報告式質問票)である。

構成と理論的背景

この質問票は、単なる利用時間の測定に留まらない。社会生態学的モデルを理論的背景とし、子どものスクリーン利用に影響を与えうる多層的な要因を捉えるように設計されている。

主な構成要素は以下の6つの領域にわたる19の質問と92の項目から成る。 1. 子どものスクリーンメディア利用時間とデバイス 2. 利用するメディアのコンテンツや好み 3. メディア利用時の行動(いつ、誰と、どのような状況で利用するか) 4. 家庭内のメディア環境(デバイスの所有状況など) 5. メディア利用に関する家庭内のルール 6. 保護者自身のスクリーンメディア利用習慣

開発と評価

SCREENS-Qは、文献レビュー、専門家(メディア研究者、心理学者など)とエンドユーザー(保護者)への聞き取りを重ねる反復的なプロセスを経て開発された。その性質は、デンマークでの研究を通じて以下のように評価されている。

  • 妥当性 (Validity): 質問票の項目が測定したい概念を適切に捉えていることが、専門家と保護者への聞き取りを通じて確認されている(内容的妥当性)。また、利用時間を問う異なる形式の質問項目間で良好な相関(スピアマンの相関係数: 0.59~0.66)が示され、構成概念妥当性も確認された。
  • 信頼性 (Reliability): 同じ保護者が時間を置いて回答した際の結果の一致度が高く、中程度から実質的な再テスト信頼性(ICC値: 0.67~0.90)が示された。
  • 実現可能性 (Feasibility): 回答に要する時間は約15分以内で、完了率も非常に高く、調査現場での実施が容易であることが示されている。

性質と限界

SCREENS-Qは、子どものスクリーン利用を「時間」だけでなく、「内容」「文脈」「環境」といった多角的な視点から評価できる包括的なツールである点が最大の特徴である。

一方で、以下のような限界も指摘されている。 * 代理報告によるバイアス: 保護者による報告のため、記憶違いや、実態より少なく申告してしまう社会的望ましさバイアスが生じる可能性がある。 * 一般化の課題: 主にデンマークの教育水準が高い層で検証されており、異なる文化圏や社会経済的背景を持つ集団への適用には、追加的な妥当性の検証が推奨される。 * 年齢範囲: 対象は6~10歳であり、自己報告が可能になる11歳以上の子どもには、別途自己記入式の質問票の開発が望ましいとされる。