インターネットゲーム障害の研究

国立病院機構 久里浜医療センターの三原聡子さんと樋口進さんのゲーム中毒のレビューから。

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リスク

うつと不安症はゲーム中毒のリスク

Brunborg GS, Mentzoni RA, Frøyland LR. Is video gaming, or video game addiction, associated with depression, academic achievement, heavy episodic drinking, or conduct problems? J. Behav. Addict. 2014; 3: 27–32.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25215212

Scharkow M, Festl R, Quandt T. Longitudinal patterns of problematic computer game use among adolescents and adults: A 2‐year panel study. Addiction 2014; 109: 1910–1917.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24938480

男性が多く、ADHD抑うつ、社交不安が関係

Lee SY, Lee HK, Choo H. Typology of Internet gaming disorder and its clinical implications. Psychiatry Clin Neurosci. 2017 Jul;71(7):479-491. doi: 10.1111/pcn.12457. Epub 2016 Oct 30.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27649380

男性が女性の2.3倍であり、ADHD抑うつ、社交不安が関係(注:三原さんたちのレビューにこの論文は含まれていない)

問題行動

衝動性・素行の問題

Gentile D. Pathological video‐game use among youth ages 8 to 18: A national study. Psychol. Sci. 2009; 20: 594–602.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19476590

Scharkow M, Festl R, Quandt T. Longitudinal patterns of problematic computer game use among adolescents and adults: A 2‐year panel study. Addiction 2014; 109: 1910–1917.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24938480

衝動性・素行の問題はゲーム中毒のリスクである。衝動性・素行の問題はADHDの症状である。

保護因子

社会的能力と自尊心が高いこと

Lemmens JS, Valkenburg PM, Peter J. Psychosocial causes and consequences of pathological gaming. Comput. Hum. Behav. 2011; 27: 144–152. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3003785/

学校関連でのウェルビーイング、クラスへの社会的統合

Rehbein F, Baier D. Family‐, media‐, and school‐related risk factors of video game addiction. J. Media Psychol. 2013; 25: 118–128.
Family-, Media-, and School-Related Risk Factors of Video Game Addiction: A 5-Year Longitudinal Study

教員の自律(autonomy)支援

Yu C, Li X, Zhang W. Predicting adolescent problematic online game use from teacher autonomy support, basic psychological needs satisfaction, and school engagement: A 2‐year longitudinal study. Cyberpsychol. Behav. Soc. Netw. 2015; 18: 228–233.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25803769

影響

影響がない

コンピューターゲーム使用者対象。ドイツでコンピューターゲームの使用の影響について調べた研究。開始時点から2年後の心理社会的幸福に対する体系的な悪影響は見られなかった。ただし、問題のあるゲーマーには状態が不安定になっていた。
Scharkow M, Festl R, Quandt T. Longitudinal patterns of problematic computer game use among adolescents and adults: A 2‐year panel study. Addiction 2014; 109: 1910–1917.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24938480

暴力性の増加

ゲーム中毒者対象。ゲームに費やす時間が物理的な攻撃性のレベルを増加させる。コンテンツが暴力的であるかどうかは関係がない。 76 Lemmens JS, Valkenburg PM, Peter J. The effects of pathological gaming on aggressive behavior. J. Youth Adolescence 2011; 40: 38–47.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20549320

うつ病、不安、社交不安の増加

ゲーム中毒者対象。2年後の計測でうつ病、不安、および社交不安が増加する。 Gentile D. Pathological video‐game use among youth ages 8 to 18: A national study. Psychol. Sci. 2009; 20: 594–602.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19476590

うつ病、学業成績の低下、素行の問題の増加

ゲーム中毒者対象。ノルウェーの思春期の研究。ビデオゲーム中毒がうつ病、学業成績の低下、素行の問題に関係する。ゲームプレイ時間は関係ない。 Brunborg GS, Mentzoni RA, Frøyland LR. Is video gaming, or video game addiction, associated with depression, academic achievement, heavy episodic drinking, or conduct problems? J. Behav. Addict. 2014; 3: 27–32. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25215212

大学の成績、ドラック使用、アルコール乱用の増加

ゲーム中毒者対象。アメリカの研究。ビデオゲーム中毒は、大学の平均評点への負の影響、薬物の使用、アルコールの乱用と関連がある。1年後計測。 Schmitt ZL, Livingston MG. Video game addiction and college performance among males: Results from a 1 year longitudinal study. Cyberpsychol. Behav. Soc. Netw. 2015; 18: 25–29.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25584728

考察

一般人口ではゲーム使用は問題がないが、ゲーム中毒群ではゲームを続けることは様々な影響を生じさせるようだ。うつ、不安、ADHDがリスク要因として挙がっているのであれば、基本的にはそれらが悪化したと捉えるのが妥当である。つまり、ゲームのやり過ぎかそれらの精神疾患を悪化させる促進要因になったかが争点だろう。そもそも健康度が高かったものがゲームによって健康度が下がったというのはかなり稀であることは、Scharkow et al.(2011)で既に明らかである。

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最初Unproblematicで最後にProblematicになっているのがゲームをやり続けて状態が悪化したグループである。2行目と3行目なので合わせても1.6%程度である。注意したいのはゲームが原因ではなく、他の原因はありつつ、ゲームをやり続けていることも十分想定されることだ。また、これらの人たちには生物学的脆弱性(さきほどのリスクとしての精神疾患等)も想定できるため、実際にゲームが生活を悪化させること心配することは考えなくても良いのではないかと思える。

併存症からはうつ病、不安症、ADHDのリスクが指摘されることから、これらの治療をすることがゲーム障害の予防・治療になることが示唆される。

保護因子は社会参加の度合いを強めたり、ゲーム以外に生きがいを見つけることなどが示唆される。思春期であれば学校を接点とした取り組みというこになるだろうが、学校が何かをするというのではなく、対象の学生へ社会へ留めるアプローチをする必要があるのだろう。なお、レビューには含まれないが、このタイプの学生は不登校になりやすいことがわかっている。不登校になり家にずっいるのでゲームをずっとしているというパターンである。

結局のところ、疾患があれば治療、社会的に孤立すれば包摂という基本的なアプローチをすることに尽きるようだ。