井出草平の研究ノート

杉原里美『掃除で心は磨けるのか』

掃除で心は磨けるのか (筑摩選書)

掃除で心は磨けるのか (筑摩選書)

αシノドスの著者インタビューでこの本の存在を知り読んだ。Web版のシノドスにも著者インタビューは転載されている。
https://synodos.jp/newbook/22936

素手で便所の掃除をする便教会江戸しぐさ、奇妙な道徳教材、教科書採択運動の組織運動(フジ住宅など)など数々の不思議で合理的でなく、現代にそぐわない数々の出来事が掲載されている。右寄りの人には向かない箇所もあるかもしれないが、私たちが教育を考える上で、必ず知っておかなければいけないことが書かれてある。現代社会を考える上での必読の書の一つと言ってよいだろう。

個人的には、本書でとりあげられている問題はしばしは話題になるので知っているものもあったが、知らないことも多く載っていて、大変、勉強になった。

その一つ「『ファシズムの体験学習』に参加して」で書かれている甲南大学の田野大輔さんの授業は初めて知り、とても興味をひかれた。ナチスでやっていたことを疑似体験する授業を田野さんは行っているようだ。ファシズムは「集団の名前」「制服」「シンボル」3つの要素が重要で「歌」も重要だという。「制服を着ることで恥ずかしさがなくなった」という学生の声が掲載されており、ここまで制服の効果は高いのか、と興味をひかれた。

杉原さんも書かれているが、ファシズムで行っていることというのは大なり小なり高校までの学校教育で行っていることである。一般社会で行ったらおかしなことが学校でまかり通っていることの理由の一端が見えた気がする。