井出草平の研究ノート

宇治小6殺害事件の再鑑定


アスペルガー症候群責任能力を争っている裁判。

再鑑定した精神科医が出廷し、「責任能力がないとまでは言い難い」との見方を示した。


精神科医は「(被告は)アスペルガー障害で、犯行当時は反応性幻覚妄想障害に陥り、剣を持った被害者の像などの幻視があった」と証言。「生徒としての被害者に腹を立てただけでなく、幻覚に影響されたからこそ犯行に至った」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081111-00000640-san-soci


弁護側の精神鑑定のようなので、この鑑定がそのまま採用されることはないと思われるが、犯行時に現実検討能力を疑問視する鑑定は興味深い。厚労省の研究では、広汎性発達障害の特性によって犯罪が起こることは示されていたが、現実検討能力はあることになっている*1


反応性幻覚妄想障害というのは、短期精神病性障害(DSM-IV)短期反応性精神病(DSM-III)のことなのかと思ったが、文脈的には症状を示しているように読める。短期精神病性障害の診断基準は1日以上1ヵ月未満なので、1日未満だったということかもしれない。一過性の場合は短期精神病性障害の診断はおろせないようだ。このあたりは詳しくないのでよく分からないが、用語の問題はさておき、犯行時に精神病性症状があったということなのだろう。

*1:市川宏伸による分担研究http://www.autism.or.jp/kenkyuu05/h17-ishii/04.pdf。ここでは医療観察法についての言及もある。